悠久の松並木が彩る、歴史薫る伽藍

およそ四百年の時を刻む興安寺は、伊達家に仕えた今村長門守の菩提寺として、その静謐なる歴史の幕を開けました。長き歳月の中で幾度かの災禍に見舞われ、無住職となる時代もありましたが、明治四十三年、二十八代住職・熊本謙悟師の入山により、再びその灯は蘇ります。師は寺子屋の開設や、農繁期における地域の子どもたちの託児事業を通じて社会教化に尽力。さらに伽藍の修復と新築にも取り組まれ、寺院は再興の道を歩み始めました。

現本堂は、平成元年に三十代住職・熊本俊龍師のもとで建立されたもの。宮大工として名高い匠・佐藤猛氏による精緻な技が随所に施され、気品あるたたずまいが際立ちます。

本堂の屋根には、寺院建築では稀少な権現造りの意匠が取り入れられており、開山堂の絵天井には、自然の美を讃える花鳥風月の画が126枚にわたり描かれ、訪れる者の目を奪います。

また、本尊であるお不動様をはじめ、歴史を物語る石塔群、戦没者の供養塔、永代供養塔なども多くの参拝者の心を打ち、静かなる祈りの場として親しまれています。

寺の参道を彩るのは、樹齢数百年を超えると伝えられる松並木。その堂々たる姿は、風格と情緒を湛え、訪れる人々に深い安らぎを与えるとともに、町の風景美の象徴ともなっています。